「幸せ」の提供が、和紙製品作りの目標です

ガンジス川で沐浴するワタシ

和紙屋4代目の大上です。

非常に共感する記事を見つけましたので、引用させてもらいます。

アメリカ合衆国コーネル大学の心理学教授で、お金と幸せの関係についてのエキスパートであるトーマス・ギロヴィッチ氏の研究について、海外サイトの「Your Tango」で紹介がありました。それによると

いちばん長続きする幸せは、旅行やアウトドア、新しいスキルの習得、美術館を訪れる、などといった「経験」にある
(「Your Tango」より意訳引用)

そうです。逆に、物を買ったときの幸福感は長くは続かないといいます。

トーマス氏はその理由を、「人間の適応能力にある」と話しています。つまり、物は買ったときには満足感を得られ、幸せに感じるけれども、時間とともにその存在に慣れてしまい、最終的にはその物に対する幸福感も薄れるということです。
(MYLOHAS 一生続く幸せのヒントは「物」よりも「経験」にありより)

いつももやもやしていました。最近、モノを全然欲しくならないんです。そう思ってしまう自分が非常にむなしく思えていました。むしろ、商品開発をする人間がこんなことでいいのか!と不安にすらなっていました。

しかし、この記事では、長続きする幸せは「経験」にあるというではありませんか。
目からうろこが落ちました。

思えば、いくつか心当たりがあります。

インドという国の衝撃

ガンジス川で沐浴するワタシ

ガンジス川で沐浴するワタシ

旅行も「経験」の大きなものです。私は、インドという国が大嫌いでした。

学生時代、半年ほどユーラシア大陸を放浪をしていたのですが、インドの首都デリーの駅で、列車のチケットを買いに行こうとしました。
すると、建物に入る前に「チケットオフィスは火事で焼けて移転した」と言われ、あろうことかその人について行ってしまい、正規の3倍くらいの値段でチケットを買わされました。
勿論正規のチケットオフィスは無事だったようです。

また、バラナシという街で、仲良くなった少年に、このあたりで一番偉い僧侶が来るから、占ってもらえと言われ見てもらいました。
すると、あなたの運気はとても悪い、お布施をしなさいと言われました。
気持ちだけ、日本のお賽銭の感覚でインドルピーを置くと、なにやら怒鳴られ、「ドルでも日本円でもオッケー」と日本語で言われ、払わないと部屋から出してもらえませんでした。

ガンジス川でバタフライをしたら、3日後に40度近い熱が出て、瀕死の状態になりました。

そんなこんなでインドには1か月ほど滞在した(うち1週間は安宿のベッドの上)のですが、2度と来ない、そう思っていたのに、2年後にまたしてもチケットを取っている自分がいました。

新卒で入った旅行会社の添乗員としてもインドを訪れましたので、都合3度も行っています。「経験」という「幸せ」を、インドという国に強烈に感じてしまっていたのでしょう。
今はものすごく当時のことを嬉々として語っている自分に気づきます。

和紙製品で本当に伝えたいこと

心を込めて書く手紙

心を込めて書く手紙

勿論、自分も製品作りの際にはモノの背後にある経験を売りたいと思っていました。

でも、今回の記事で、経験を売った先にある、「幸せ」というものを感じてもらうことが一番の目標なのだ、ということに気づきました。

和紙と言う素材は、言ってみれば紙です。ティッシュペーパーも、コピー用紙もみんな同じ紙です。

そうした紙と差別化する際の販売方法として、「大切な人へのお手紙、相手に想いが伝わるような和紙に書いてみませんか?コピー用紙みたいにぺらぺらでは恥ずかしいと思いますよ」というのは、よく使います。でもこれって、相手に嫌われない、好かれたいという意味でのベネフィットは満たしていますが、本当の意味での経験からくる「幸せ」の提供になっていたのでしょうか。

必要に迫られるからモノを購入するのではなく、「大切な友人に手紙を書こう。あの人はこんな質感の紙を気に入るかな。」とか、実際に書いているときには、「自分の書いた文章と和紙の感じがマッチして嬉しいな、きっとこれをみたらあの人は喜んでくれるだろうな」など。

相手のことを思いやり、相手のことを考える、そんな体験・経験から生まれる「幸せ」こそ、私が和紙の手紙の製品作りを通して伝えていきたいことなんだ、と実感しました。

こんなポチ袋も作っていますが、ただお金を返す、渡すだけでなく、この絵柄を通して「なんで和紙にこんな絵柄やねん」と突っ込んで笑い合う経験こそ、「幸せ」につながるんです。

胃袋や突き指などのポチ袋

胃袋や突き指などのポチ袋

今後は、紙そのものだけをアピールするでもなく、商品が売り場でどうやって手に取ってもらって、どんな「経験」を感じてもらい、その経験がどんな「幸せ」につながるのか。
そんなことを一番に考えながら開発をしていきたいと思います。
商品作りが、また一段と楽しくなりました。

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