和紙ってそもそも何なのでしょうか。

機械抄き和紙のメーカー
機械抄き和紙のメーカー

機械抄き和紙のメーカー

皆様こんにちは、大上です。
これから、ブログの中で知っているようでよくわからない和紙の世界について、すこしずつご紹介していきます。
まずは、そもそも論です。

ユネスコの無形文化遺産に登録された和紙。でも、そもそも和紙ってなんなのでしょうか。

非常に分かりづらく、私が株式会社オオウエに入社してから悩みに悩んだテーマです。一応の決着は自分の中ではつきましたので、その事について書ければと思います。

Wikipediaで和紙と調べてみると、
❝和紙(わし/わがみ)は、日本古来の紙。欧米から伝わった洋紙(西洋紙)に対して日本製の紙のことをさす。日本紙と同義。❞
と、記載されています。

そうなんです、日本でずっと使ってきた、作ってきた紙が和紙。それに対して西洋から入ってきた紙が洋紙です。言葉の上では、たったこれだけの違いです。

またしてもWikipediaからの引用ですが、

❝一般的な「和紙」の特長は「洋紙に比べて格段に繊維が長いため、薄くとも強靭で寿命が比較的長く、独特の風合いをもつ」と言われている(但し、種類や用途 によって、一概には断言できない)。木材パルプ原料から生産される「洋紙」と比較すると、原料が限られ生産性も低いために価格は高い。伝統的な漉き方で は、独特な流し漉き技術を用いるが、「現代の和紙」(「和紙」風の風合いを持つ紙)は需要の多い障子紙や半紙を中心に、伝統的でない原料を使ったり、大量 生産が可能な機械漉きの紙も多いが、目視だけでは区別が難しい場合も多い(伝統的な製法と異なる原料を用いたり、機械漉きの紙は、歴史的に耐久性や経年劣 化に対する検証が不十分であり、シミの発生や繊維の脆化などの欠点を持つ物も多い。そのため日本古来の原料と製法で作られた紙という意味での「和紙」との 混用を認めない意見もある)。❞

非常に難しい文章だと思いませんか?

いろいろなカッコ書きの注釈は、それぞれに利害関係のあるバックグラウンドを持つ人たちの思惑が交錯しているからです。

無形文化遺産に登録された、本美濃紙

無形文化遺産に登録された、本美濃紙

冒頭に述べた無形文化遺産の和紙は、非常に分かりやすいです。原料は伝統的なものを使用、漉き方も伝統に則っていて、乾燥工程なんかにも規定があります。そうやって生まれてきた和紙は、本当に美しく、機能性も抜群です。ただ、きっちりと数字を調べたわけではありませんが、現在和紙として流通しているもののうち、そうした要件を満たしている和紙はごくわずかです。無形文化遺産に登録されていない産地でも、すべて伝統の方法に則った和紙作りが今も行われていますが、そういったところを含めても、ごくわずかと言っても過言ではありません。

では、どういうものが市場をにぎわせているのでしょうか。

手で漉いてはいるが、原料にパルプを用いたり、外国産の楮を用いたり。機械で抄いているが、原料には非常にこだわりを持っていたり、伝統の方法に則って、楮を使っているのだけれど、海外で手漉きされていたり。パルプの中でも、繊維の長い針葉樹のパルプのみを使用して機械抄きに励むメーカーもあります。

山梨県の和紙メーカーさんの機械

山梨県の和紙メーカーさんの機械

ここからは私の持論ですが、

和紙とは長い繊維を絡めて作る、原料の良さを出来るだけ残した紙、
です。

洋紙というのは、短い繊維を、さらに短く砕いた繊維をシート状に敷き詰めるので、この作り方とは大きく異なります。

    「絡める」と「敷き詰める」

というところに大きな違いがあると考えています。なぜこの二つの違いが、和紙の良さ、洋紙の良さにつながるのかは、記事を分けて書かせてもらいます。和紙というのは、日本人が使ってきた文化や生活習慣そのものだと考えます。昔ながらを踏襲しながら、時代時代の使い方を見据え、常に進歩してきました。

現在和紙を抄いていると自負されているメーカーさんにとって、彼らの抄くものは和紙なんです。そして、いろんな思いや手法に支えられる全国の和紙を扱うのが、私たちの仕事です。

しかし、一般の消費者の方々にとっては、上記のような違いを知ることは大変難しいです。そこに便乗して、和紙の「手漉き」「機械抄き」「原料はどんなものか」など、すべてをごちゃ混ぜにして語ってきたのは我々販売者の怠慢だったとも言えます。

何が和紙か、ということも大事ですが、どんな和紙なのか、それがどんな風に今を生きる人たちにとって役に立つかを提案していくことが我々の使命だと思っております。

和紙には、とても長い歴史がありますが、その良さを利用しながら、それより長い未来を作っていければと思います。

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