卸・問屋に未来はあるのか

オオウエも30年ほど前に自社ビルを建てました。

こんばんは、和紙卸4代目の大上です。

「そうは問屋がおろしません」とは、条件を満たさないときなど、なんでも思い通りにはいかないよというときに使われます。
でも、最近ではメーカーさんが直接卸してくれます。問屋なんて飛ばしてしまえばいいのです。
考えてみると、作っているところもわかっているのに、なぜ割高になってまで問屋から買わないといけないのでしょうか。

ロットが大きくないとメーカーは売ってくれないので卸が必要、とも言えますが、それも、大手がネットショッピングでより細分化して販売できる
システムを導入すれば、通用しなくなります。全国に営業マンを配備できるわけではないので、卸のような人たちが必要と言われますが、それもインターネットの台頭で揺らいでいます。

では、何を強みに我々のような問屋はこれから先やっていけばいいのでしょうか。

目次
問屋の歴史
景気の良かった時期の問屋
景気が悪くなった現在の問屋
インターネット時代のメーカー
問屋に未来はあるのか
2つの打開策とその問題点

問屋の歴史

様々な和紙

様々な和紙

問屋の起源は鎌倉時代にまでさかのぼります。当時より運送、倉庫、委託販売業を兼ねていました。
江戸時代には、大坂の紙問屋は紙の産地の問屋より買い付けをし、それを江戸に流したりしていました。
天下の台所大坂、全国より商品を入れていました。

とにかく需要が多かったらしく、1824年には、米や木材よりも紙の流通量の方が多かったのです。
増えすぎる需要、それに供給するために、きっちりと交通整理をすることで、一般の町人の手にも紙が渡るようになりました。
明治、大正と洋紙の流入におされ、和紙問屋だった会社さんは洋紙を扱う方向にチェンジしていきます。

景気の良かった時期の問屋

オオウエも30年ほど前に自社ビルを建てました。

オオウエも30年ほど前に自社ビルを建てました。

第二次世界大戦後に株式会社オオウエは創業しています。
戦後の復興に伴い紙の需要も増え、掛け紙やうちわ、封筒用の紙にて販売を増やします。
紙が足りなくて、本来ならばB品になるような和紙も売れていったという、にわかに信じがたい話も聞きます。

問屋というのは、「売る人」です。反対にメーカーは「作る人」。
問屋がモノを作ったりはしませんし、メーカーも問屋が最大の販売先になります。
非常に良い関係が出来上がっていきます。

問屋は、たくさんメーカーから購入して、それをその先のお客に小分けをして売っていきます。
メーカーにとっては、小さい販売先の対応を一つ一つしていくことなんて出来ないので、WINWINです。
問屋はそのために、よりよい位置に、倉庫スペースを確保する必要がありましたので土地を購入したりしました。

景気が悪くなった現在の問屋
景気が減退すると、途端に紙の需要、とりわけ和紙の需要は落ちました。
これまでパッケージなどにお金をかけていた方たちが、より簡素な方向に流れていくからです。
景気が悪い時に真っ先に削る予算は、包装紙やパッケージなど、直接的に商品には影響しない部分です。

また、ライフスタイルもより洋風になっていきますので、和紙の必要とされる場面は減り続けています。
お客様はより安いものを求め、それにこたえるべく問屋は値下げを敢行。量が多ければまだしも、その下げた価格での販売量も下がってきます。
そうすると、メーカーに対する発言力も下がっていき、問屋への不信感が増えていきます。
問屋は自分たちで何かを生み出しているわけではないので、自分たちの利益を削りながら、他社よりも安い値段で、というのを売りにしていくほかありません。

ここまでつらつらと書いてきましたが、問屋というのは、基本的に
「需要」が大きい時に力を発揮する仕事です。増大する需要に対する商流の整備という側面があるのです。
これが、需要がひとたび減退してしまえば、問屋なんて必要なく、メーカーが直接売ってしまえばいい、ということになります。
そんな風に業界のムードが変わりつつある中で、「インターネット」が登場します。

インターネット時代のメーカー

色々な取り組み

色々な取り組み

進歩的、かつ問屋に対して不信をもつメーカーは、このインターネットという新たな武器を見逃しません。
これまでは、自分たちでは出向けないお客様への営業を問屋が担っていたのが、インターネットが担ってくれるようになるのです。
勉強不足の問屋よりも、自分たちの言葉でつづられた「メーカー直販」という売り。おまけに利益率は中抜きをする分向上する。
何も悪いことはありません。この動きに問屋が悪口を言おうものなら、「あなた方が売ってくれないから」と一蹴されます。
今は問屋への配慮から、そこまで積極的にインターネットに力を入れる和紙メーカーさんは多くありませんが、
今後の流れとしては、間違いなくインターネット活用の方向に向かうと思われます。

問屋に未来はあるのか

大変ネガティブな側面ばかりを書いてしまいました。
私自身が、そしてオオウエが直面してきた問題ばかりです。
こんな逆風ばかりの状況ですが、問屋としての強みを、より伸ばしていくことに活路があると考えています。

2つの打開策とその問題点

全国の和紙産地との協業

全国の和紙産地との協業

・1メーカーに縛られず、いろいろな仕入れ先を駆使して提案をすることができる
インターネットには膨大な情報が流れます。その中で、正しい産地の状況を比較して正確に提案できる能力は、必ず必要になります。
なかなか和紙という性質上、その産地までも理解して選ぶことができる人は多くはありません。
職人さん、メーカーさんの強みを一番引き出せる方法は何か、ということを伝えることができます。
新聞という紙媒体はなくなるかもしれないが、記者という職業は残り続けるだろう、という話と似ているかもしれません。
問題点
知っている知識をどのように多くの人に伝えるか。その知識が、どうやったら必要としている人に届けられるのか。
その部分のノウハウに乏しいので、強化の必要あり。

・自身がモノづくりに転じる
問屋は、自分が工場を持たない分、ある意味情報で商売をしています。
加工先をたくさん知っていたり、効率よく紙製品を作れたり。
色々な産地を組み合わせられるメリットを生かしたモノづくりは、優位性があります。
下請け体質からの脱却=中抜き敢行、となりますね。
問題点
しかし、作ることができても販路がありません。

どちらにしても、下請け体質を捨てて、自分の武器をPRしていく。
そのPRの部分に、今後の課題があり、そして活路があるのだと思います。
当たり前かもしれませんが、こういった部分に取り組んでいくことが、問屋の未来を作っていくことになるのでしょうね。

 

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